質問:遺族年金を受給する母を扶養にできますか?
転職して新たに社会保険(協会けんぽ)に加入した方から「遺族年金を受給する母を扶養にできますか?」と質問がありました。
ここで言う扶養にできるか?は、健康保険の被扶養者にできるかどうかを意味しています。
被扶養者の範囲
健康保険の被扶養者の範囲は、以下のようになっています。
「被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人」
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。
母は、直系尊属に該当するので、この基準はクリアです。次に収入要件をみます。
収入要件
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
質問者の母は同居の61歳でしたので、年間収入が180万円未満であれば要件に該当します。
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遺族年金は非課税
年金が受給できる年齢になり、受けることとなった老齢年金は雑所得に該当し、年金が以下の額を超えると課税対象となります。
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下で
65歳未満の人、108万円
65歳以上の人、158万円
老齢年金は課税対象ですが、遺族年金は非課税扱いです。
質問者の母は税法上の扶養親族となり、質問者は収入金額から38万円の扶養控除を受けることができます。
しかし、健康保険の被扶養者となる収入の判断基準には、遺族年金も含めて計算されます。
遺族年金、または遺族年金と老齢年金の額があわせて180万円以上になると、健康保険の被扶養者にはなれません。
質問者の母の遺族年金は140万円でしたので、収入要件もクリアです。
ただもう一つ問題がありました。収入要件に次の文言があります。
「かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合」
母の遺族年金が140万円ですので、質問者の年収が280万円以上でなければいけません。
質問者は転職したてで、月給は20万円スタートです。最初の賞与もいきなり満額は期待できません。
向こう1年間20万円×12ヵ月と、賞与を月給0.5ヵ月分としても合計250万円です。
この場合は、どうなるのでしょうか。
収入要件の続きには、次の文言がありました。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。
もし被保険者の年収が認定対象者の年収の2倍以上なくても、主に被保険者が世帯の生計を維持していると認められれば被扶養者になれるということですね。
今回のケースでは、生計維持関係が認められ、母を被扶養者とすることができました。
まとめ
家族を扶養に入れると、自身の所得税の軽減の他、被扶養者は社会保険料の負担が減ります。75歳からの健康保険は、後期高齢者医療制度への加入となり対象となりませんが、親が75歳未満で無職、パート、年金収入のみという場合は、ぜひ活用してください。
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投稿者プロフィール
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柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
法律に適した労務管理で、働きやすい職場環境を整え、従業員の定着や生産性の向上など、企業の末永い発展をサポートします。
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