夜勤の有給は2日利用になる?
「17時から翌8時までの夜勤を行っているが、その日に有給休暇を利用したら2日使ったことになると言われました。これまでは1日利用だったのに今期から運用を変えると言われたのですが、問題ないのですか?」と労働者さんから相談がありました。
原則の有給取得単位は労働日
「使用者は6箇月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない(労働基準法第39条)」と規定されています。
この労働日は暦日計算で、午前0時からの24時間を指しています。
したがって、質問の午前0時をまたぐ夜勤の場合、17時から24時まで1労働日、0時から8時まで1労働日とみなして、2労働日の有給利用が原則になります。
例外もある
一方、 「交替制における2日にわたる1勤務及び常夜勤勤務者の1勤務については、当該勤務時間を含む継続24時間を1労働日として取扱って差支えない」ともされています。
したがって、質問のケースでは午前0時をまたぐ勤務であっても、有給1日利用としても構いません。
なお、労働時間を計算する際の 「1日」についても暦日で考えるのが原則であるものの、「継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の1日の労働とする」とされています。つまり、有給休暇の単位である「1労働日」と、就業規則・雇用契約書で定めている労働時間の「1日」とは意味が違いますので注意してください。
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有給2日利用に変えるとした措置に問題はないのか?
これまで夜勤の有給利用について、1日利用だっとものを2日利用に変えるというのは法律の原則に則ることではありますが、会社が一方的に行うと不利益変更にあたります。
これまで同様に夜勤に有給を利用しただけなのに、自分の有給日数が2日減ることになりますから質問者さんにとっては、不利益な扱いです。
不利益変更は慎重に
有給休暇の扱いなどの待遇も労働条件にあたります。
労働条件を変更する場合には、労使間で十分に話し合うことが重要です。
合意による労働条件の変更
労働契約の変更は、労働者と使用者が合意して行うことが原則であり、労働者と使用者が合意すれば、労働条件を変更することができます。(労働契約法第3条、第8条)
就業規則による労働条件の変更
使用者は、労働者の合意を得ることなく、一方的に就業規則を変更して、労働者の労働条件を不利益に変更することはできません。ただし、次の要件をいずれも満たせば、使用者は、就業規則の変更によって労働条件を変更することができます。(労働契約法第9条、第10条)
- その変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合などとの交渉の状況の事情などに照らして合理的なものであること。
- 労働者に変更後の就業規則を周知させること。
まとめ
有給休暇の5日利用が義務化され、このように労働者の実質の有給利用日数は変わらないまま、消化される日数を増やす措置を取ることがありますが法の趣旨に反し適切ではありません。今回のケースも、夜勤でも1日利用だった有給休暇を会社が一方的に2日利用に変更することは、適切ではありません。
不利益変更となる場合は、専門家に相談し慎重に行いましょう。
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投稿者プロフィール
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柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
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