試用期間満了で解雇することはできるのか?

従業員を解雇する場合には、解雇する日の30日前に予告するか、平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。(労働基準法第20条)

採用はしたけれど「馬が合わない」とか「別の人が採用できたので辞めてもらいたい」といった理由で解雇することはできません。
実際には解雇自体はできますが、解雇された従業員から解雇無効を訴えられて争った場合には、まず勝てません。

試用期間満了での「本採用拒否=解雇」は、通常の解雇より少し緩やか

試用期間中は「解約権留保付労働契約」と解されることが多く、会社は試用期間中にその従業員の適格性を判断し、不適格であれば解約権を行使することになります。
この場合の本採用拒否は解雇とみなされますが、通常の解雇より多少緩やかに判断される傾向にあります。

解雇理由として、①能力不足、②欠勤・遅刻が多い、③協調性がなく指示にも従わない、④経歴詐称 などがあります。

「学歴」「職歴」「必要資格、免許の有無」等で、業務に支障をきたすような重大な経歴詐称があれば、解雇が認められる可能性が高くなりますが、①~③での解雇は、会社が従業員に対し適切な指導・教育をしていないと解雇無効とされる可能性が高くなります。

新卒採用で能力不足による解雇は難しい

新卒採用の場合、当然職業経験がなく、それを前提として採用を行っているはずですから、適切な指導・教育をしないままの解雇は、まずできません。少なくとも1年から3年の期間は必要でしょう。ただし、その期間を全て試用期間とすることはできません。

もし営業職が難しければ、営業サポート部門や事務職での勤務が可能かどうか、などの職種変更等も考慮する必要があります。

中途採用の場合は、地位を特定する

通常の一般職の中途採用であれば必要ありませんが、これまでの経歴やスキルを考慮して、役職者として一般職よりも高給で迎え入れる場合などは、地位を特定して雇用契約書を結んでおくのが賢明です。

営業職であれば「達成してもらいたい目標売上」や、人事部であれば「改定してもらいたい人事制度の完成・運用」などを雇用契約に盛り込んでおき、それらが達成できなかった場合には、解雇や降格、降給もある旨を定めておきます。そうすることで、好待遇で迎え入れたが期待に応えられなかった場合の対処がしやすくなります。

採用から14日経過後は、解雇予告が必要

採用から14日が経過すると、通常の解雇と同様に解雇する日の30日前に予告するか、平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。

「採用から14日以内なら自由に解雇できるんでしょ?」という質問を受けることがありますが、あくまで解雇予告及び解雇予告手当の支払いを免除されているだけで、解雇が有効か無効かはまた別の話になります。それが合理的な理由のない解雇の場合は、争って負ける場合も当然ありますので注意しましょう。

解雇事由は、就業規則に定めておく

人事権による普通解雇は就業規則がなくても不可能ではありませんが、従業員に懲戒処分を科す場合、懲戒解雇する場合には、必ず就業規則が必要です。
試用期間での解雇も、「試用期間満了後に本採用しないことがある」旨を就業規則に定めます。
就業規則は10人未満の会社では作成、届け出の義務はありませんが、人を雇ったら作成することをお勧めします。

まとめ

会社には人事権があり、従業員を解雇することも可能ですが、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)と定められています。

試用期間中でも安易に解雇はできないと思っていたほうが無難です。
「採用してみないとわからない」「採用してから考える」という話もよく聞きます。気持ちはわかりますが、誰を採用するかは会社の裁量で自由にできますが、解雇は会社の裁量で自由自在というわけにはいきません。

入口の採用で十分に吟味し、就業規則には解雇事由をしっかり定めておくことが重要です。

投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
法律に適した労務管理で、働きやすい職場環境を整え、従業員の定着や生産性の向上など、企業の末永い発展をサポートします。
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