「精神障害の労災認定基準」にカスハラを追加

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カスハラとは

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先、施設利用者などの外部の人から、暴言や暴力、無理な要求などの迷惑行為を受けることです。このような行為は、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、厚生労働省は、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました。

改正のポイント

業務による心理的負荷評価の追加

業務による心理的負荷評価表に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」という具体的出来を追加されました。

心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充

具体的には、顧客や取引先、施設利用者等からの著しい迷惑行為が「強」と評価される場合の例として、暴力を受けた、脅迫された、人前で大声で罵倒された、等が挙げられます。
またパワーハラスメントの6類型すべての具体例を明記しました。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し

悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認めることにしました。

医学意見の収集方法を効率

専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更しました。

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カスタマーハラスメントの具体例

カスタマーハラスメントは、サービスの向上や改善を求めるクレームとは異なり、個人的な感情や嫌がらせが含まれます。

①長時間拘束型
従業員を理由もなく長時間拘束し、何度も同じことを繰り返して話すなど、時間を奪う行為。

②リピート型
過去に解決済みのことや、何度も同じクレームを繰り返す行為。

③暴言型
言葉の暴力。罵倒や侮辱の言葉を浴びせかける行為。

④暴力型
物理的な暴力。手を出す、物を投げるなどの行為。

⑤威嚇・脅迫型
直接的な暴力はしないが、威嚇的な態度や言葉で脅す行為。

⑥権威型
自分の地位や権威を笠に着て、従業員を圧迫する行為。

⑦店舗外拘束型
店舗やオフィスの外で従業員を呼び止め、拘束する行為。

⑧SNS/インターネット上での誹謗中傷
SNSやインターネット上での名誉を傷つける行為や、嫌がらせを行う行為。

⑨セクシュアルハラスメント型
性的な言動で従業員を不快にさせる行為。

※参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

カスタマーハラスメントが発生した場合の対処法や予防策

カスハラと正当なクレームの区別

正当なクレームは商品やサービスの向上を目的とした意見や要求ですが、カスハラは理不尽な要求や嫌がらせ、悪質ないじめを目的としたものです。

カスハラに対する基本的な対応方針

カスハラに対しては、冷静に対応し、証拠を残すこと。また、早期の相談や上司や同僚との情報共有も重要です。

カスハラを防止するための予防策

カスハラの予防策として、スタッフ教育や顧客とのコミュニケーションの徹底、場合によっては警備体制の強化などが考えられます。

悪質な場合の行政や専門家への相談

カスタマーハラスメントが悪質な場合や、解決が難しい場合は、行政や専門家の力を借りることも考えるべきです。

まとめ

カスタマーハラスメントは従業員のメンタルヘルスや企業の業績に大きな影響を与える可能性があります。
従業員の精神的負担の軽減、精神疾患の未然防止は、人材定着のためにも重要です。パワハラ、セクハラ、マタハラとともに、企業はカスタマーハラスメントの認識を高め、適切な対応を行っていくことが求められます。


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投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
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