社会保険適用拡大で扶養を外れるメリットは?これからのパートの働き方。

人事労務に関する役立つ資料を無料でダウンロード!→こちらから

2020年3月3日に閣議決定された年金改革法案で、パート・アルバイト等の短時間労働者の健康保険・厚生年金保険への加入が更に拡大されることとなりました。2022年10月からは、従業員数101人以上の企業に勤める以下の短時間労働者は健康保険・厚生年金保険に加入することになりました。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 1ヵ月あたりの賃金が88,000円以上であること
  • 雇用期間の見込みが2ヵ月以上であること
  • 学生でないこと(夜間・通信・定時制除く)
  • 従業員数101人以上

2022年9月までは、従業員数501人以上だった要件が、2022年10月から101人以上、2024年(令和6年)10月から51人以上へと段階的に拡大することになりました。

実際に扶養から外れた場合のメリットも考慮しながら今後の生活設計をしていきましょう。

パートで社会保険に加入すると損?

年間収入が130万円未満なら健康保険、厚生年金保険は配偶者の扶養でいられて、保険料がかかりません。そのためこの範囲で働いている人も多いのではないでしょうか。

101人以上の企業で働いていて要件を満たすと社会保険加入となります。月額88,000円以上、年間1,060,000円以上で扶養を抜けることになります。この条件が51人以上の企業まで拡大され、これにより新たに65万人が対象になるとのこと。

88,000円で社会保険に入った場合、健康保険料は約4,500円、40歳以上の人は介護保険料が約800円、厚生年金保険料は約8,000円となり、年間保険料は約160,000円。その他所得税、雇用保険料、住民税もかかってきます。

それなら年収100万円以内におさえて所得税、住民税、社会保険料が何もかからないほうが良い。というのも一つの選択肢です。

人事労務に関する役立つ資料を無料でダウンロード!→こちらから

社会保険に加入するメリット!

社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入していれば、健康保険の傷病手当金、出産手当金の対象になります。

病気、ケガで働くことができず給料がなかった場合、最大1年6ヵ月間、給料額のおおよそ3分の2が支給されます。
出産に際しては産前6週、産後8週の間、同じく給料額のおおよそ3分の2が支給されます。
厚生年金保険に加入するので、将来的には国民年金からの老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金も受給できます。
万が一の死亡、障害に際しては、遺族厚生年金、障害厚生年金の支給があり、国民年金からの基礎年金よりも手厚い保障がついています。

このように社会保障の恩恵を受けながら将来の年金の積み立てができるのです。
(実際には世代間扶養方式で、自分の積み立てではなく、現役世代が年金受給世代を支えています)

ただ保険料との兼ね合いで手取りが逆に少なくなってしまっては、やはり加入したくないと感じてしまうのではないでしょうか。

130万円の収入を超えて、自分で社会保険料を払うようになると、手取りの逆転現象が起こり得ます。130万円を少し超えるくらいなら180万円から200万円くらいの収入を目指しましょう。
家庭の事情が許すなら共働きで、お互いフルタイム勤務のほうがメリットが多いのではないでしょうか。

社会保険適用拡大特設サイト 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま

年金受給開始年齢の上限引き上げ

年金は原則65歳から受給できますが、受給開始を66歳から67歳からと繰り下げて受給することができます。繰り下げると年金受給額が1ヵ月0.7%増額されます。これを75歳まで繰り下げると84%の増額となり、かなりお得なような気がします。

しかし年金収入も実は所得税がかかります。年金が増える分、かかる所得税、住民税も増えることになります。また75歳までに死亡するリスクもあり、一銭ももらえずということだってあり得ます。
どのタイミングで年金を受給するかも、それぞれのライフプラン次第です。

まとめ

年金は、基礎年金、厚生年金の二階建てですから、現役世代は厚生年金保険に加入して、世帯収入を上げながらできるだけもらえる年金額を増やしておきたいところです。
この適用拡大を良いほうに捉え、働き方を選択していきましょう。


中小企業の経営者様必見!!

人事労務に関する役立つ資料が無料でダウンロードできます!
日々の業務にお役立てください!
→資料ダウンロードはこちら

投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
法律に適した労務管理で、働きやすい職場環境を整え、従業員の定着や生産性の向上など、企業の末永い発展をサポートします。
お困り事やお悩み事がありましたらお気軽にご相談ください。