月給制や日給制の最低賃金の計算方法とは?
毎年、10月に最低賃金額の改定が行われています。
コロナ禍で、東京1,041円、神奈川1,040円への引き上げは驚きましたが、経営者は従業員に対して、この額以上での給料支払いをしないといけません。
給料が時給で支払われる人は、時間給≧最低賃金額(時間額)となるように支払えば良いので分かりやすいですが、ここでは月給や日給の人の計算方法を確認します。
日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
日給制の場合に「日給制は残業代なし」とよく誤解されます。
日給1万円の約束で、9時から始まって結局仕事が終わったのは夜の9時。給料は1万円。
このケースだと、昼休みが1時間あったとして実働11時間ですから、最低賃金を割ってしまいます。
10,000円÷11時間≒909円
また1日8時間を超えた場合には、割増残業1.25倍も必要です。
日給制の場合にも「所定労働時間が何時間でその日給額なのか」ということを決めておかなければいけません。
所定労働時間が8時間の神奈川の場合だと最低賃金1,040円×8時間=8,320円以上での設定が必要です。労働時間が8時間を超えた場合の割増時給単価は1,040円×1.25=1,300円です。
月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
1ヵ月平均所定労働時間は就業規則に規定されているはずですが、従業員10人未満で就業規則がない場合は以下のように考えます。
365日-年間休日数=年間労働日数
年間労働日数×1日所定労働時間=年間所定労働時間
年間所定労働時間÷12か月=1ヵ月平均所定労働時間
年間休日120日、1日8時間勤務の場合の1ヵ月平均所定労働時間は163時間です。(端数切捨て)
最低賃金を計算する時は、月給の内訳の中から「通勤手当」「時間外手当」「精皆勤手当」「家族手当」は除いて計算します。
(例)
基本給 150,000円
職務手当 20,000円
家族手当 10,000円
通勤手当 5,000円
総支給額 185,000円
185,000円-家族手当10,000円-通勤手当5,000円=170,000円
170,000円÷163時間≒1,042円(OK)
東京、神奈川の最低賃金を考慮すると、最低賃金の計算に入れない手当を除いて17万円が最低基準になりそうです。
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最低賃金のポイント
①試用期間中も最低賃金が適用される。
試用期間中の特例として、最低賃金を適用させない「最低賃金の減額の特例許可申請」がありますが、障害を持つ方や認定職業訓練を受ける一定の方などの雇用機会増大の措置といえます。
ここに試用期間の者があるにはありますが、これまで業種による慣行があったり、合理的な理由がなければならず、一般の中小企業が許可申請までして行うことはまずありません。
試用期間のはじめから最低賃金額以上で設定しましょう。
②最低賃金には、「地域別最低賃金」と、「特定(産業別)最低賃金」がある。
普段、耳にする最低賃金は「地域別最低賃金」であり、東京1,041円、神奈川1,040円というものです。
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業ごとに設定されている最低賃金で、特定の産業の労使が、「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定されます。
しかし、現在「特定(産業別)最低賃金」の中には「地域別最低賃金」の水準を下回っているものもあります。その場合には、地域別最低賃金額が優先されて適用されます。
③最低賃金法違反の罰則は?
最低賃金は、最低賃金法として定められていて、仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされます。したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。
まとめ
ここでは触れませんでしたが、時給、日給、月給制の他にも出来高払い制や、歩合制の場合の計算方法もあります。いずれにしても、最低賃金を下回る給料支払いは違法となってしまいます。
特に月給制の場合に、知らず知らずのうちに改めて計算してみたら最低賃金を下回っていたというケースがありますので、注意しておきましょう。
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投稿者プロフィール
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柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
法律に適した労務管理で、働きやすい職場環境を整え、従業員の定着や生産性の向上など、企業の末永い発展をサポートします。
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