夜間の宿直業務に「残業代」はない?

宿直とは?

通常の勤務時間以外に交代制、当番制等で行う勤務を「当直」といい、昼間は「日直」、夜間は「宿直」と呼ばれます。二つをあわせて「宿日直」とも呼ばれます。
宿直は、夜間の巡回や、臨時・突発的な対応のための泊り込みの勤務です。通常の業務を行わないことが前提で、夜勤とは区別されます。

労働基準監督署の許可が必要

宿日直勤務の場合、労働基準監督署長の許可を受けることにより、労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外することができます。
この場合の宿日直手当は、宿日直勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われる賃金の1人1日平均額の3分の1以上の支払いで足りることとなりますが、許可を受けていなければ通常の労働時間となります。

許可を受けられる条件は、以下。

  1. 原則として、通常の労働は許可せず、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等を目的とするものに限って許可すること。
  2. 宿直、日直とも相当の手当を支給すること(1回の宿日直手当の最低額は、宿日直につくことの予定されている同種の労働者に対して支払われる1日平均賃金額の3分の1)
  3. 宿日直の回数が、頻繁にわたるものは許可しないこと。勤務回数は原則として、日直については月1回、宿直については週1回を限度とすること(宿日直を行い得るすべての労働者に宿日直をさせても不足であり、かつ勤務の労働密度が薄い場合はこれを超えることも可)
  4. 宿直については、相当の睡眠設備を条件として許可すること

許可申請に必要な書類

  1. 断続的な宿直又は日直勤務許可申請書
  2. 対象労働者の労働の態様が分かる資料(所定労働時間内におけるタイムスケジュール、対象業務の業務マニュアル、作業規定、業務日報等・巡回の業務がある場合は、巡回経路を示す図面等)
  3. 就業規則(該当部分)
  4. 支払われるべき宿日直手当の最低額が分かる資料(宿日直手当計算書、賃金台帳の写し(計算に用いたもの)等)
  5. 勤務数が分かる資料(シフト表)
  6. 睡眠設備の概要が分かる資料(睡眠場所の見取図、写真)

このように許可を受けるために、申請する書類は多いです。

通常の勤務時間は許可外

つまり、ほとんど労働することなく、あっても軽微な対応のみで、その他は睡眠設備で寝ていられるような場合に許可されることになります。
設備メンテナンス業で、機械トラブルがあり実際に出動すれば、その時間は通常の労働時間になりますし、病院、クリニック等の医療施設で、急変対応、救急搬送対応などに追われ、宿直業務の範囲を超える場合には、通常の時間外労働となり、いずれのケースも22時から翌日5時までの時間帯には深夜割増も発生します。

まとめ

宿直勤務で少額の手当の支払いしかなく、実労働時間に対しても残業代が支払われていないような場合には、改めて現状の勤務が労働基準監督署の許可を受けた、常態としてほとんど労働する必要のない宿直勤務といえるのか、それとも通常業務を行っており、夜勤と考えられるのか検討してください。
夜勤と考えられるのであれば、シフト制による通常の夜勤として人員配置を行う必要があります。
放置しておくと、未払い残業代が積みあがっていき、請求された場合には相当な金額となる恐れがあります。また、時間外労働の上限規制にも引っかかってきますので、ぜひ見直しておきましょう。

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投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
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