「懲戒処分」を行うには就業規則が必要です!
遅刻が多い、上司の指示に従わない、周囲との協調性がなく業務が滞る等、問題行動のある従業員の対応に頭を悩ます経営者は少なくありません。
しかし適切な手順を踏まず一方的に解雇などしてしまうと、労使トラブルになりやすく思わぬ出費を招くことがあります。適切に「懲戒処分」を行うポイントを押さえておきましょう。
懲戒処分とは
懲戒処分とは「従業員が果たすべき義務や服務規律違反を行った場合に制裁として行われる不利益措置」です。一般的に処分の軽いものから以下のものがあります。
「戒告」
文書または口頭で厳重注意し、将来を戒める。
「けん責」
始末書または顛末書を提出させて将来を戒める。
「減給」
その名の通り、賃金の一部を支給しない。ただし「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払時期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされています。
「出勤停止」
一定期間の出勤を禁止し、その期間の賃金を支給しない。
「降格」
役職や職位または職能資格を引き下げる。降格すると役職手当や職務手当等が下位の額に引き下げられます。
「諭旨解雇」
従業員に退職を勧告し、従業員に退職届を提出させたうえで解雇する。
「懲戒解雇」
原則として解雇の予告期間を置かず、労働者を一方的に解雇する。
刑罰不遡及の原則
日本国憲法第39条では「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」と規定されています。
従って、懲戒処分の対象となる行為が行われる前に、それが懲戒処分の対象となることが就業規則に定められていなければ、懲戒処分を下すことができません。また、就業規則を改定した後に、過去の行為に遡及して処罰することはできません。
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職務専念義務
従業員には「職務専念義務」があり、勤務時間中は使用者の指揮命令に従い、その職務に専念する義務があるとされています。遅刻や無断欠勤が続くといった行為の他、勤務時間中に業務と関係のない行為を行うことも 「職務専念義務」違反にあたることになります。
ただし、それらの行為に対しても懲戒処分を行う場合は「勤務時間中は私用の携帯を利用しない」など具体的に就業規則の服務規律に定めて、何を行なったらどの懲戒処分にあたるのか従業員に周知しておきましょう。
懲戒処分の妥当性
懲戒処分に際し、労働契約法15条には、
「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」
と定められています。すなわち
1、懲戒処分の種類と内容が就業規則に定められているか。
2、従業員の行為が従業規則上の懲戒事由に該当しているか。
3、本人に弁明の機会を与えたか。
4、懲戒処分の内容が重すぎないか。過去の懲戒処分事由とのバランス。
などについて、検討しましょう。
まとめ
従業員の問題行為に対して、制裁行為である「懲戒処分」を行うためには、就業規則への規定が必要です。なんの根拠もなく行う懲戒処分は認められません。就業規則がなければ、できる処分は「解雇」のみとなってしまいます。
トラブルを未然に防ぐためにも、就業規則に懲戒処分の種類や内容についてしっかりと明記し、それを従業員に周知することが重要です。
従業員10人未満の会社でも「就業規則の作成」をお勧めしています。
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投稿者プロフィール
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柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
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