退職者は引く?引かない?社会保険料の徴収の仕組み

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新年度を迎え、行政窓口は混雑していますね。
自営業を開始することになり国民健康保険、国民年金に加入する方や、3月で退職して4月から新会社へ出勤なんて人も多いでしょうね。
従業員が異動するときに、給料計算担当者を迷わす社会保険料徴収の仕組みを確認しましょう。

被保険者期間

健康保険・厚生年金保険の資格は月単位で「被保険者の資格を取得した日の属する月から、その資格を喪失した日の属する月の前月まで」が、資格のある期間であり、保険料の対象となります。

基本は翌月徴収

保険料は月割りではなく、4月1日に資格取得しても、4月30日に資格取得しても4月から被保険者となり、4月分から保険料がかかります。

給料の締め支払日が15日締め当月25日払いという会社は多いと思います。
この場合、4月1日入社の人は4月15日でタイムカードを締め、半月分の給料を4月25日に支払うことが一般的かと思います。この4月25日払いの給料の時には、健康保険料・厚生年金保険料は控除しません。
次回の5月15日締め5月25日払いの給料の時に、4月分の健康保険料・厚生年金保険料を控除することになります。

健康保険法第167条1項「事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。」

月末締め翌月10日払いの場合はどうでしょうか。
4月30日締め5月10日払いの場合には、4月分の健康保険料・厚生年金保険料は5月10日に控除します。
この場合も翌月徴収の扱いとなります。

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資格喪失の場合の徴収方法

退職して、資格を喪失するときは注意が必要です。
被保険者期間は「被保険者の資格を取得した日の属する月から、その資格を喪失した日の属する月の前月まで」 でした。この資格を喪失する日は、退職日の翌日になります。

再び、4月1日入社で資格を取得した人を例にしてみます。給料締め支払い日は、15日め当月25日払い。

●5月15日退職の場合、資格喪失日は5月16日。
5月は被保険者ではないので、5月25日支給の給料(4月16日から5月15日分)では5月分の保険料は控除せず、4月の1か月分のみ控除します。

●5月31日に退職した場合、資格喪失日は翌日の6月1日。
この場合5月は被保険者となり、保険料の対象となるため、5月分の保険料の徴収が必要です。
6月25日支給の給料(5月16日から5月31日分)から5月分の保険料を控除します。
ただし、5月16日から5月31日の間に欠勤が多く、保険料の徴収ができないような場合もあり得ますので、その場合には、5月25日支給の給料(4月16日から5月15日分)から4月分、5月分の2か月分を控除することも可能です。

賞与の場合

賞与の場合は、支給日が被保険者期間かどうかがポイントです。
被保険者期間は 「その資格を喪失した日の属する月の前月まで」でした。

7月15日退職、7月25日賞与支給の場合には、7月は被保険者ではありませんので、賞与の保険料は徴収しません。

ただし、賞与の支給の条件に「賞与支給日に在籍していること」としている会社もありますので、賞与の支給対象かどうかは確認が必要です。
また、7月10日賞与支給、7月20日退職のように、賞与支給の後、退職する場合もあります。
この場合にも賞与からの保険料は必要なかったということになりますので、最後の給料支給の時等に返還しましょう。

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入社した月に退職をした場合

入社した月に退職した場合にも、1か月分の保険料がかかり給料から控除します。ただし、退職した同月に別の会社に就職したり、国民年金の資格を取得した場合には、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要となりますので、この場合には、年金事務所から厚生年金保険料が還付され、会社もその退職者に返還する必要することになります。ただし、健康保険料については還付されません。

まとめ

4月入社の方の保険料を4月25日払い給料から控除する「当月徴収」をしている会社も結構見受けられます。
法律上はよろしくはないのですが、すぐさま是正指導されるかというと、実務的にはそうでもありません。ただ、退職の場合に当月徴収だということに気を付けておかないと、多く控除してしまうということも起きがちです。翌月徴収が原則ではありますが、こちらはこちらで退職時の最後の給料で控除するのかしないのか?賞与の保険料は?と混乱してしまいます。
改めて整理しておきましょう。


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投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月から中小企業においても「同一労働同一賃金」が適用されました。これは正社員 と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。これまでのように単にパートだからという理由だけで「交通費や賞与はない」ということは認められません。
これからは「同一労働同一賃金」に対応するため、正社員 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しなければいけません。
「働き方改革」が推進され、残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化など、法律はめまぐるしく変わっています。また「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
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