情報機器作業の労働衛生管理|休止時間・健康診断・在宅勤務の進め方

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パソコンを長時間使う従業員から、目の疲れや首・肩の痛みを訴えられたものの、会社として何をすればよいのか分からない。休止時間を設けたいが、現場でどのように運用すればよいか迷っている。そのような会社も多いのではないでしょうか。

情報機器作業の健康管理は、本人に「適度に休んでください」と伝えるだけでは不十分です。会社が対象業務を把握し、作業時間、機器、職場環境、健康診断、相談体制を一つの仕組みとして運用する必要があります。

この記事では、厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」をもとに、中小企業が確認したい事項と社内での進め方を整理します。

法律上の義務とガイドライン上の対応を分けて考える

最初に確認しておきたいのは、法令とガイドラインの位置づけです。

労働安全衛生法に基づく一般健康診断や、事務所衛生基準規則に定められた職場環境の基準などは、会社が守らなければならない法令上の義務です。在宅勤務でも、労働安全衛生法などの労働関係法令は適用されます。

ただし、労働者の自宅は通常、事務所衛生基準規則が対象とする「事務所」ではありません。情報機器作業のガイドラインも事務所での作業を対象としているため、これらが自宅にそのまま直接適用されるわけではありません。会社はこの違いを踏まえ、自宅でも健康を損なわない作業環境となるよう従業員に助言し、必要な支援を行います。

一方、情報機器作業について示された作業時間の目安、専用の健康診断、健康相談、教育などは、厚生労働省のガイドラインに基づく対応です。ガイドライン自体は法令ではありませんが、情報機器作業による心身の負担を減らすために、会社が労働衛生管理を組み立てる際の基準になります。

例えば「一連続作業時間は1時間を超えない」「次の連続作業までに10分から15分の作業休止時間を設ける」という内容は、労働基準法上の休憩時間を新たに定めたものではありません。情報機器作業から離れる時間を、業務の流れの中で確保するための指針です。

社内ルールを作るときは、すべてを「法律で決まっている」と説明するのではなく、法令上必要な対応と、健康障害を防ぐためにガイドラインに沿って行う対応を分けて伝えましょう。

まず、社内の情報機器作業を洗い出す

情報機器作業は、パソコンを使う事務職に限られません。例えば、次のような作業が対象になります。

  • データの入力、検索、照合
  • 文章や画像の作成、編集、修正
  • プログラミングやCAD作業
  • モニターを使った監視や点検
  • タブレットやスマートフォンを継続して使う業務

職種名だけで判断すると、店舗、倉庫、製造現場などで行われている情報機器作業を見落とすことがあります。各部署の管理者と従業員に確認し、実際の作業内容を把握してください。

調査するときは、部署、業務名、使用機器、1日の作業時間、画面を続けて見る時間、本人の裁量で作業を中断できるか、姿勢を変えられるかを一覧にします。在宅勤務者については、自宅で使っている機器と作業場所も確認の対象です。

この一覧は健康診断の対象者を決めるだけでなく、休止時間の設定や機器の見直しにも使います。人事部門だけで作るのではなく、現場の実態を知る管理者と一緒に確認することが欠かせません。

作業区分は「時間」と「拘束の強さ」で判断する

ガイドラインでは、情報機器作業を健康診断の対象範囲が異なる二つの区分に分けています。

一つ目は、1日に4時間以上情報機器作業を行い、かつ、作業中に常時ディスプレイを注視する、入力装置を操作し続ける、本人の裁量で休止や姿勢変更をしにくいといった、拘束の強い作業です。この区分では、対象となる作業者全員が情報機器作業に関する健康診断の対象になります。

二つ目は、それ以外の情報機器作業です。この区分では、自覚症状を訴える人が健康診断の対象になります。作業時間が4時間未満でも、眼や肩の痛みなどの症状がある人はこちらに該当する場合があります。

「事務職だから同じ区分」「パソコンを4時間使ったら全員が同じ区分」とは限りません。時間だけでなく、画面を見続ける必要があるか、入力を中断できるか、姿勢を変えられるか等を確認します。判断に迷う場合は、産業医などの専門家の意見を聞き、安全衛生委員会等で検討します。

1時間・10〜15分・小休止を現場でどう運用するか

ガイドラインは、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10分から15分の作業休止時間を設けるよう示しています。また、一連続作業時間の途中にも、1回から2回程度の小休止を設けるとしています。

この運用を従業員任せにすると、締切前や繁忙時間帯には後回しになりがちです。管理者が業務の組み方を見直し、画面を注視する作業と、電話、打合せ、書類整理などを組み合わせます。作業の切替えが難しい部署では、交代要員や当番の配置も検討します。

小休止では、短時間でも画面から目を離し、姿勢を変えることがポイントです。休止時間に業務用スマートフォンを見続けていれば、目や姿勢への負担は十分に減りません。管理者は、単に「休みなさい」と声をかけるのではなく、休止できない業務量や締切になっていないかを確認します。

会社が決める作業ルールには、少なくとも次の内容を入れておくと実行しやすくなります。

  • 一連続作業時間の目安
  • 作業休止時間と小休止の取り方
  • 休止中に行う作業、行わない作業
  • 繁忙時に休止時間を確保する方法
  • 管理者が確認する項目
  • 目や首、肩などに症状が出た場合の報告先

勤怠記録だけでは、画面を見続けた時間までは分かりません。必要な部署では、業務予定表や作業記録も使い、実際に連続作業が長くなっていないかを確認してください。

作業環境は機器だけでなく、使い方まで確認する

情報機器を新しくすれば問題が解決するとは限りません。同じ机や椅子でも、体格や作業内容によって負担は変わります。会社は、機器を用意することと、本人が適切に調整できるようにすることの両方を考えます。

職場では、次の点を確認します。

  • 窓や照明が画面に映り込んでいないか
  • 画面、書類、手元の明るさに大きな差がないか
  • 文字の大きさや画面の明るさを本人が調整できるか
  • 椅子の高さと背もたれが体格に合っているか
  • 足裏が床につき、脚を動かす空間があるか
  • キーボード、マウス、書類を無理なく置けるか

フリーアドレスの職場では、席に着いたときに画面や椅子を調整する手順を決めます。高齢者、眼鏡を使用する人、身体に障害のある人などには、一律の設定を求めず、作業時間や機器を個別に検討してください。

日常点検を従業員が行い、照明、空調、机、椅子、情報機器などの定期点検を会社が行う形にすると、担当が明確になります。不具合が見つかったときの連絡先も用意します。

健康診断と健康相談を日常の対応につなげる

情報機器作業の拘束性の強い作業区分に該当する人には、配置前の健康診断と、配置後1年以内ごとに1回の定期健康診断を行うことがガイドラインで示されています。それ以外の区分の作業者でも目の疲れ、首・肩・腰の痛みなど自覚症状を訴える人も対象です。

ここでいう健康診断は、労働安全衛生法に基づく一般健康診断とは目的や検査項目が異なる、ガイドライン上の健康診断です。二つは別の健康診断ですが、一般健康診断と同じ機会に実施できます。その場合も、健診機関には対象者と必要な検査内容を事前に伝えておきます。

結果に所見があった場合は、受診を勧めて終わりにしません。産業医等の意見を踏まえ、作業時間の短縮、担当業務の変更、画面や入力機器の調整、作業場所の改善などを検討します。

体調の変化を早めに相談できる窓口も必要です。正社員だけでなく、パートタイマーなどを含む作業者全員に相談先を知らせ、相談内容や健康情報を取り扱う担当者を限定します。現場管理者には、病名や詳しい診断内容を共有するのではなく、業務上必要な配慮事項を伝える運用が適切です。

作業者と管理者に、それぞれ必要な教育を行う

作業者には、画面や椅子の調整方法、作業姿勢、休止時間の取り方、ストレッチ、健康への影響、相談先を説明します。新しい機器の操作方法だけでなく、負担を減らす使い方まで教育内容に含めます。

管理者には、部下の連続作業時間や業務量を把握する方法、作業の組替え、症状を訴えた人への対応、健康相談や人事部門へつなぐ手順を伝えます。作業者が休止を取りにくい状況は、本人の意識よりも業務配分に原因があることも少なくありません。

教育を実施したら、実施日、対象者、内容、使用資料を記録します。新入社員だけでなく、配置転換、新しい情報機器の導入、在宅勤務の開始時も教育の機会です。ルールを変更した場合は、資料の差替えと再周知も記録に残します。

在宅勤務でも会社の健康管理は続く

在宅勤務では、作業の様子を管理者が直接確認できません。しかし、会社の安全衛生管理が従業員任せになるわけではありません。

会社は在宅勤務者にチェックシートを渡し、作業場所の明るさ、画面の映り込み、机と椅子、空調、使用機器、連続作業時間を確認してもらいます。問題がある場合は、機器の貸与、外付けディスプレイやキーボードの利用、作業場所の変更など、実行できる改善策を検討します。

在宅勤務者にも健康相談、健康診断、教育の案内が届くようにし、出社者と手続きに差が出ないよう管理します。

社内運用はこの順番で始める

情報機器作業の管理を一度に完成させる必要はありません。まず実態を把握し、負担が大きい業務から改善します。

  1. 各部署と在宅勤務者の情報機器作業を一覧にする
  2. 作業時間と拘束の強さを確認し、作業区分を決める
  3. 連続作業、作業休止時間、小休止のルールを作る
  4. 机、椅子、画面、照明などを点検し、改善担当者を決める
  5. 健康診断の対象者と相談窓口を確認する
  6. 作業者向け、管理者向けの教育を行う
  7. 点検、教育、健診、事後措置の記録を残す
  8. 一定期間後に現場を確認し、実行できていないルールを見直す

記録は、対象業務と作業区分、環境点検と改善内容、教育の実施状況、健康診断の受診状況、業務上の配慮に分けて管理します。健康情報は閲覧できる担当者を限定し、通常の業務記録と同じように扱わないことも大切です。

まとめ

情報機器作業の労働衛生管理は、休止時間だけを決めれば終わるものではありません。対象業務と作業区分を把握し、作業時間、職場環境、健康診断、健康相談、教育を継続して運用することが会社に求められます。

最初の一歩は、各部署で誰がどのような情報機器作業をしているかを確認することです。その結果をもとに、負担の大きい業務から作業の組み方と環境を見直してください。従業員に症状が出てから対応するのではなく、日々の仕事の進め方に予防策を組み込むことが、無理なく続けられる労働衛生管理につながります。




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投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月からすべての企業に「同一労働同一賃金」が適用されました。
「同一労働同一賃金」に対応するため、もし正社員と非正規雇用労働者(契約社員、パート社員等)の間に不合理な待遇差があるなら是正しなくてはいけません。
また少子高齢化を背景に、働き方の転換のための「働き方改革」が推進されています。
残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化、令和4年に続き令和7年4月と10月の育児介護休業法改正など、法律はめまぐるしく変わっています。
「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
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