仕事中のけがで従業員が1~3日休んだ場合も、会社には「労働者死傷病報告」が必要です。死亡・休業4日以上は遅滞なく報告する一方、休業1~3日の災害は四半期ごとにまとめ、その翌月末までに報告します。7~9月に発生した分は、10月に確認・提出する対象です。
「労災保険の給付を請求しないから」「数日で復帰したから」という理由で、報告も不要になるわけではありません。まずは事故の記録と休業日数を確認し、給付の請求とは別に、会社の報告が済んでいるかを確かめましょう。
休業日数によって、報告の時期が変わる
労働安全衛生規則第97条は、労働災害のほか、就業中や事業場内などでの負傷・窒息・急性中毒によって労働者が死亡し、または休業したときの報告を定めています。提出先は所轄の労働基準監督署です。
| 状況 | 労働者死傷病報告の扱い |
|---|---|
| 死亡、または休業・休業見込み4日以上 | 遅滞なく報告する |
| 休業1~3日 | 四半期ごとにまとめ、期間の最後の月の翌月末までに報告する |
| 休業0日 | この報告は不要。ただし、事故の種類によって別の事故報告が必要な場合がある |
4日以上になる見込みがある場合は、実際に4日が経過するのを待つ必要はありません。短期休業の四半期報告に回さず、死亡・休業4日以上の区分で手続きを進めます。
根拠は労働安全衛生規則第97条です。見込み日数での区分は厚生労働省の電子申請説明資料・6ページ、休業0日の扱いは花巻労働基準監督署のQ&A・2ページでも確認できます。
なお、事業場の敷地外での通常の通勤中の事故は、労災保険の対象となり得ても、労働者死傷病報告とは分けて考えます。事業場内の事故など、報告対象か判断に迷う場合は、発生場所と状況を所轄署へ伝えて確認してください。報告の対象範囲は厚生労働省「労働災害が発生したとき」に示されています。
「会社を休んだ勤務日」だけでは数えない
労働者死傷病報告の休業日数は、災害発生の翌日から数えます。事故当日は含めず、けがなどで働けない期間に所定休日があれば、その休日も含めて判断します。勤怠上の欠勤日数をそのまま転記すると、4日以上の報告を見落とすおそれがあります。
例えば、木曜日に仕事中にけがをし、翌日の金曜日から月曜日まで働けず、火曜日に復帰したと仮定します。土日が会社の休日であっても、その間も働けない状態だったなら、休業日数は金・土・日・月の4日です。「欠勤した勤務日は金曜と月曜の2日だけ」と数えることはできません。
一方、事故当日に早退したものの、翌日から通常どおり勤務できた場合は、休業0日となります。治療が続く期間と、働けず休業する期間も同じとは限りません。医師の説明、本人の状態、実際の勤務状況を確認して整理しましょう。
翌日からの起算と所定休日を含む例は、和歌山労働基準監督署の案内に掲載されています。労災保険の給付に用いる日数と混同せず、この報告のための日数を確認することが大切です。
7~9月分は10月に集め、早めに提出する
休業1~3日の場合は、災害が発生した期間ごとに、次の期限で報告します。
| 災害の発生期間 | 報告期限の原則 |
|---|---|
| 1~3月 | 4月末まで |
| 4~6月 | 7月末まで |
| 7~9月 | 10月末まで |
| 10~12月 | 翌年1月末まで |
区分は「復帰した月」や「労災保険を請求した月」ではなく、災害の発生期間を基準に確認します。神奈川労働局・相模原労働基準監督署の案内・2ページにも、この期限表が掲載されています。
7~9月分を確認するなら、各現場へ「この期間に、けがで休んだ従業員はいなかったか」を照会し、総務に届いた事故連絡、勤怠記録、休業の記録を照合しましょう。復帰が早かった事故ほど、現場内の連絡だけで終わりやすいためです。
社内の提出目標は、月末ぎりぎりに置かず、10月中に余裕を持って完了できる日に設定することを勧めます。これは法定期限とは別の社内運用の提案です。申請に不慣れな場合は、アカウントや入力項目の確認にも時間を確保してください。
給付請求とは別に、電子申請の準備をする
労災保険の給付請求は、治療や休業などに対する保険給付の手続きです。労働者死傷病報告は、会社が災害の発生状況などを監督署へ報告する手続きです。片方を行えば、もう片方も済んだことにはなりません。労災保険を使用するかどうかにかかわらず報告が必要である点は、諫早労働基準監督署の案内でも説明されています。同資料の様式説明は改正前のため、提出方法は次の現行案内を確認してください。
2025年1月1日から、労働者死傷病報告は原則として電子申請になっています。厚生労働省の入力支援サービスでは、情報を入力し、e-Govを通じて申請できます。
パソコン端末を持たないなど、電子申請が困難な事情がある場合には、当分の間、書面での報告も可能です。その場合も従来の様式第23号・第24号を使わず、現行の参考様式を確認します。入口と様式は厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました」にまとまっています。
入力前には、被災者の氏名・職種・その職種の経験期間、傷病名と部位、発生日時・場所、作業の内容、どのようにけがをしたか、原因、休業日数などを集めます。「転んだ」「手を切った」だけでなく、何をしていたときに、どの設備や物が関係し、どう負傷したかを現場と確認しておくと、事実に沿って入力できます。報告事項の一覧は、前掲の神奈川労働局の案内でも確認できます。
休業が延びたら、四半期の締めを待たない
当初は2日で復帰する予定でも、診察の結果、休業が4日以上になることがあります。この場合は、1~3日の四半期報告としてそのまま待たず、判明した時点で、死亡・休業4日以上の報告を遅滞なく進めてください。
すでに1~3日の報告を提出している場合は、提出日や受付情報、当初の休業日数、その後の経過を用意し、所轄の労働基準監督署へ変更方法を確認します。電子申請の取消しや訂正の方法を自己判断で決めず、既に提出した報告があることを伝えて相談しましょう。
社内では、事故の連絡を受けた担当者が「休業見込みを次にいつ確認するか」まで決めておくと、報告区分の変化を把握しやすくなります。提出前に復帰状況を確認し、提出後も休業が延びた連絡を総務へ戻す流れを設けるのが実務上の工夫です。
まずは7~9月の事故記録を取り出し、休業0日、1~3日、4日以上・その見込みに分けてみてください。給付請求の有無だけで対象を絞らず、現場の情報と勤怠を照合することが、短期休業の報告漏れを防ぐ出発点になります。
※制度・手続きは2026年10月19日時点の公的資料で確認しています。
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投稿者プロフィール

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柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月からすべての企業に「同一労働同一賃金」が適用されました。
「同一労働同一賃金」に対応するため、もし正社員と非正規雇用労働者(契約社員、パート社員等)の間に不合理な待遇差があるなら是正しなくてはいけません。
また少子高齢化を背景に、働き方の転換のための「働き方改革」が推進されています。
残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化、令和4年に続き令和7年4月と10月の育児介護休業法改正など、法律はめまぐるしく変わっています。
「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
法律に適した労務管理で、働きやすい職場環境を整え、従業員の定着や生産性の向上など、企業の末永い発展をサポートします。お困り事やお悩み事がありましたら、お気軽にご相談ください。
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