前年分所得税の確定申告とは?人事労務担当者向けに実務を解説

中小企業の人事労務管理を表すビジネスイメージ
中小企業やクリニックの人事労務・組織づくり・人事評価・採用に役立つ資料を無料でダウンロード!
こちらから

はじめに

前年分所得税の確定申告は、従業員本人が行う税務手続きです。会社が本人の申告を代行するものではありませんが、給与担当者や人事労務担当者には、源泉徴収票の交付、年末調整との違い、従業員からの問い合わせ対応が関係します。

特に、医療費控除、ふるさと納税、副業収入、複数勤務、退職後の収入などがある従業員からは、年末調整後に何を確認すればよいか質問を受けることがあります。会社としては、税務判断を断定せず、必要な資料を整理し、国税庁などの最新案内を確認してもらう導線を用意することが大切です。

この記事では、前年分所得税の確定申告について、会社側が押さえておきたい年末調整との関係、源泉徴収票の管理、従業員説明、問い合わせ対応、社内記録のポイントを整理します。

確定申告と会社実務の関係

本人が行う手続きであること

所得税の確定申告は、原則として所得者本人が自分の所得や控除を整理して行う手続きです。会社は従業員の申告内容を判断したり、本人の代わりに申告書を作成したりする立場ではありません。

一方で、会社が交付する源泉徴収票は、従業員が確定申告を行う際の重要な資料になります。給与担当者は、会社ができることと本人が確認すべきことを分け、問い合わせを受けたときに案内できる状態にしておく必要があります。

年末調整との違い

年末調整は、会社が給与所得者についてその年の給与や一定の控除をもとに所得税を精算する手続きです。確定申告は、年末調整では扱いきれない所得や控除、複数の収入などを本人が整理して申告する手続きです。

従業員から質問を受けたときは、「年末調整をしたから確定申告は常に不要」と説明しないことが大切です。該当する控除や所得の有無は本人の状況によって変わるため、会社は一般的な違いを説明し、個別判断は国税庁や税務署の案内を確認してもらう形にします。

源泉徴収票の役割

源泉徴収票には、支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除額、源泉徴収税額など、確定申告で確認される情報が記載されます。従業員が申告する場合、会社が交付した源泉徴収票の内容が基礎資料になります。

会社側では、源泉徴収票の交付時期、再発行手続き、退職者への送付方法、問い合わせ先を整理しておきます。内容に誤りがある場合は、給与計算データや年末調整資料を確認し、必要に応じて修正対応を行います。

従業員から相談されやすいケース

医療費控除や寄附金控除

医療費控除や寄附金控除など、年末調整では完結しない控除について、従業員から質問を受けることがあります。会社は制度の概要を簡単に案内することはできますが、控除の可否や具体的な計算は本人が確認する事項です。

社内案内では、必要書類や入力方法を断定するよりも、国税庁の確定申告特集、税務署、自治体などの確認先を示すと安全です。給与担当者が個別の判断をしない運用にしておくと、説明の行き違いを防ぎやすくなります。

副業や複数勤務がある場合

副業収入がある従業員、複数の会社から給与を受けている従業員、年の途中で転職した従業員は、年末調整だけでは整理できない場合があります。会社としては、自社で把握していない収入を判断できない点を明確にしておく必要があります。

問い合わせを受けた場合は、自社が交付した源泉徴収票の内容、年末調整で反映した資料、前職分を含めたかどうかなど、会社で確認できる範囲を伝えます。そのうえで、申告の要否は本人が税務署等で確認するよう案内します。

退職者・休職者への対応

退職者や休職者から、源泉徴収票の再発行や年末調整の有無について問い合わせが入ることがあります。退職時期や在籍状況によって、会社で年末調整を行っているか、本人が確定申告で整理する必要があるかが変わります。

退職者対応では、送付先住所、本人確認、再発行履歴、問い合わせ記録を残すことが大切です。電話だけで処理すると後から経緯が追いにくくなるため、管理表で履歴を残す運用にしておくと安心です。

給与担当者が確認したい資料

給与計算データ

源泉徴収票の内容を確認するには、年間の給与、賞与、社会保険料、源泉所得税、年末調整結果が給与計算データと一致しているかを見る必要があります。確定申告時期の問い合わせは、過去の給与データを確認する場面が増えます。

給与計算ソフトの出力、賃金台帳、年末調整一覧、源泉徴収票の控えを紐づけて保管しておくと、問い合わせ対応がスムーズになります。担当者が変わっても確認できるよう、保存場所と検索方法を決めておきましょう。

年末調整資料

年末調整で提出された扶養控除等申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除関係の資料などは、源泉徴収票の内容を確認する根拠になります。従業員から内容確認を求められたときに、どの資料を見ればよいか整理しておきます。

保管時は、個人情報を扱う資料であることを前提に、閲覧できる担当者を限定します。問い合わせ対応のために必要な範囲で確認し、関係のない情報まで共有しない運用が必要です。

交付・再発行の記録

源泉徴収票をいつ、どの方法で交付したかを記録しておくと、再発行依頼や未着問い合わせに対応しやすくなります。紙で交付する場合、電子交付する場合、退職者へ郵送する場合で確認手順を分けておきます。

再発行時には、本人確認、送付先、再発行日、対応者を記録します。確定申告期限が近づくと急ぎの依頼が増えるため、社内で処理期限の目安を決めておくと対応が安定します。

社内案内で注意すること

税務判断を断定しない

従業員から「確定申告が必要か」「いくら戻るか」と聞かれても、会社が個別の税務判断を断定するのは避けます。本人の所得、控除、家族状況、他の収入は会社だけでは把握できないためです。

社内案内では、「会社では源泉徴収票の内容や年末調整の反映状況を確認できます」「申告の要否や入力方法は国税庁・税務署で確認してください」といった形で、回答できる範囲を明確にします。

案内先をそろえる

担当者ごとに案内先が違うと、従業員が迷いやすくなります。国税庁の確定申告関連ページ、税務署の相談窓口、自治体の住民税窓口など、用途別の確認先を社内でそろえておきましょう。

問い合わせが多い会社では、社内ポータルやメール文面に、源泉徴収票の再発行依頼先、会社で回答できる範囲、税務相談先をまとめておくと、給与担当者の個別対応を減らせます。

個人情報の扱い

確定申告に関する相談では、医療費、家族状況、副業、寄附、退職後の収入など、私的な情報が含まれることがあります。会社が不要な情報まで聞き取ると、個人情報管理上の負担が増えます。

給与担当者は、源泉徴収票や年末調整に関係する範囲だけを確認し、個別の申告内容そのものには踏み込みすぎないようにします。相談内容を記録する場合も、必要最小限にとどめることが大切です。

「個人情報の扱い」は、社内案内で注意することを実務に落とし込む前に社内で確認しておきたい部分です。関係する規程、契約書、対象者、説明資料、実施記録を整理し、問い合わせ内容、日付、担当者等を残しておくと、後日の問い合わせにも同じ基準で対応しやすくなります。

申告時期に向けた社内準備

問い合わせが増える時期を見込む

確定申告の時期が近づくと、源泉徴収票の再発行、年末調整内容の確認、退職者からの問い合わせが増えやすくなります。通常業務と重なると対応が遅れやすいため、事前に担当者と処理手順を決めておきます。

問い合わせ件数が多い会社では、よくある質問を社内案内としてまとめておくと効果的です。回答できる範囲と税務署等へ案内する範囲を分けておけば、担当者の判断がぶれにくくなります。

社内で整理するときは、誰に何を説明し、どの資料で根拠を示すかを先に決めます。口頭だけで済ませると担当者ごとに対応が分かれやすいため、簡潔な記録や一覧表に残す運用が有効です。

再発行依頼のルール

源泉徴収票の再発行依頼は、本人確認、依頼方法、送付方法、対応期限を決めておきます。メール、社内フォーム、紙の申請など、窓口を絞ると処理漏れを防ぎやすくなります。

退職者からの依頼では、在籍時の社員番号や住所だけでは本人確認が不十分な場合もあります。会社の個人情報管理ルールに沿って、確認方法を事前に整理しておきましょう。

「再発行依頼のルール」を整理する際は、申告時期に向けた社内準備に関係する資料、確認担当者、判断日、従業員への説明範囲を記録にまとめます。資料だけを直しても現場の運用が変わらないことがあるため、管理職や給与・勤怠担当者へ共有するタイミングを決めておくことが大切です。

給与担当者間の共有

確定申告時期の問い合わせ対応は、給与担当者だけでなく、人事、総務、経理が関係することがあります。誰が源泉徴収票を再発行し、誰が年末調整資料を確認し、誰が従業員へ回答するのかを明確にしておきます。

担当者が不在でも対応できるよう、問い合わせ記録、標準回答、資料の保存場所を共有しておくことが重要です。属人的な対応を減らすことで、繁忙期でも回答品質を保ちやすくなります。

実務で起こりやすいつまずき

会社が判断しすぎる

従業員のために丁寧に答えようとして、会社が申告の要否や控除可否を断定してしまうことがあります。しかし、個人の税務判断は本人の状況によって変わるため、会社が踏み込みすぎると誤案内につながります。

給与担当者は、源泉徴収票や年末調整に関する事実確認を中心に対応します。税額計算や申告内容の判断は、本人が国税庁や税務署で確認するよう案内する線引きを社内で共有しておきましょう。

源泉徴収票の確認が遅れる

源泉徴収票の内容に疑問がある場合、給与計算データや年末調整資料の確認に時間がかかることがあります。申告期限が近づいてから対応すると、従業員にも担当者にも負担が大きくなります。

年末調整後に源泉徴収票を交付した段階で、再発行・内容確認の窓口を案内しておくと、早めの問い合わせにつながります。問い合わせがあった場合の確認手順も、給与計算担当者内で共有しておきます。

古い案内を使い続ける

確定申告に関する案内は、毎年同じように見えても、様式、入力画面、相談体制、期限の扱いが変わることがあります。前年の社内メールをそのまま使うと、古いリンクや表現が残ることがあります。

社内案内を出す前に、国税庁などの最新情報を反映し、会社で回答できる範囲も見直します。更新日を入れておくと、後から古い案内と混同しにくくなります。

実務で起こりやすいつまずきをマニュアルにしておくと、後日の問い合わせにも同じ基準で対応しやすくなります。

社内で整理しておきたい確認事項

標準回答

従業員からよく受ける質問について、標準回答を用意しておくと担当者ごとのばらつきを減らせます。たとえば、源泉徴収票の再発行、年末調整との違い、会社で回答できない税務相談の扱いを整理します。

標準回答は長い文章にする必要はありません。会社で確認できること、本人が確認すること、案内先の3つを分けて書くと、問い合わせ対応に使いやすくなります。

問い合わせへの回答は、担当者の経験だけで処理すると対応が分かれやすい項目です。判断基準、例外時の相談先、従業員へ伝える文言を事前にそろえておくと、社内で整理しておきたい確認事項の継続的な見直しにつなげやすくなります。

資料の保存場所

源泉徴収票の控え、年末調整資料、給与計算データ、再発行履歴をどこに保存するかを決めます。紙と電子データが混在している場合は、検索方法や閲覧権限も整理しておきます。

保存場所が担当者の個人フォルダだけになっていると、退職や異動の際に確認できなくなるおそれがあります。会社として管理する場所を決め、必要な担当者が確認できる状態にしましょう。

社内で整理しておきたい確認事項を見直す場合は、現在の運用、社内規程、説明資料、保存している記録を横並びで確認します。差が見つかったときに誰が修正し、いつ従業員へ伝えるのかを決めておくと、担当者ごとの判断差を減らせます。

まとめ

前年分所得税の確定申告は従業員本人の手続きですが、会社の給与実務にも関係します。特に、源泉徴収票、年末調整資料、退職者対応、再発行依頼、従業員からの問い合わせは、給与担当者が準備しておきたい部分です。

会社は個別の税務判断をせず、会社で確認できる範囲と本人が確認すべき範囲を分けて案内することが重要です。社内では源泉徴収票の管理、標準回答、問い合わせ記録を整えておきましょう。

毎年発生する手続きだからこそ、前年の案内をそのまま使わず、最新情報と社内運用を確認することが大切です。給与計算・年末調整・従業員説明をつなげて整理しておくと、申告時期の問い合わせ対応を落ち着いて進めやすくなります。




中小企業の経営者様・クリニックの院長様必見!!

中小企業やクリニックの人事労務・組織づくり・人事評価・採用に役立つ資料を無料でダウンロードできます!日々の業務にお役立てください!
→資料ダウンロードはこちら

投稿者プロフィール

柏谷英之
柏谷英之
柏谷横浜社労士事務所の代表、柏谷英之です。
令和3年4月からすべての企業に「同一労働同一賃金」が適用されました。
「同一労働同一賃金」に対応するため、もし正社員と非正規雇用労働者(契約社員、パート社員等)の間に不合理な待遇差があるなら是正しなくてはいけません。
また少子高齢化を背景に、働き方の転換のための「働き方改革」が推進されています。
残業時間の上限規制(長時間労働の是正)、有給休暇の取得義務化、令和4年に続き令和7年4月と10月の育児介護休業法改正など、法律はめまぐるしく変わっています。
「ブラック企業」という言葉が広く浸透し、労働条件が悪いと受け取られる企業は採用にも苦労しています。
法律に適した労務管理で、働きやすい職場環境を整え、従業員の定着や生産性の向上など、企業の末永い発展をサポートします。お困り事やお悩み事がありましたら、お気軽にご相談ください。